:課長:自分の価値観で判断しがち
:部長:相手の立場を考えて判断する
相手の感情に飲み込まれず、「なぜ相手はそう考えるのか」という背景や論理を、自分の価値観とは切り離して知的に理解する能力。
相手の痛みや喜びを感じ取る温かさは持ちつつも、感情移入しすぎて自分が疲弊(共感疲労)しないよう、適度なバランスを保つ。
相手の話を聞く際、即座に「正しい・間違い」「良い・悪い」のレッテルを貼らず、相手の主観的な真実としてそのまま受け止める忍耐力。
「相手の課題」と「自分の課題」を混同しない。相手を理解することと、相手に同意すること(迎合)は別物であると理解している。
自分と似た境遇の人だけでなく、全く異なる背景(文化、世代、立場)を持つ「理解しがたい他者」に対しても、関心を寄せようとする意志。
部下(Z世代)のドライな態度に腹を立てている課長に対し、同僚の部長(高いエンパシーを持つ)が対話を通じて、課長の視点を広げようとしている場面。
最近入った新人、何なんですかね。飲み会に誘っても『業務時間外なので』って即答で断るんですよ。チームの絆とか、そういうのを軽視しているとしか思えなくて、腹が立ちます。
なるほど、課長はチームの結束を何より大切にしているからこそ、その即答に『拒絶された』ような冷たさを感じて、寂しさや憤りを感じているんだね。(→ まず相手の感情(寂しさ・怒り)を否定せずに言語化し、受け止める。)
そう、寂しいというか…無礼だと思うんです。僕たちの頃は、先輩の誘いは断らなかったでしょう? 彼には『先輩への敬意』がないんです。
確かに私たちの世代の常識とは違うね。でも、少し視点を変えて、新人の靴を履いてみようか。彼が『敬意がない』から断ったのではなく、『別の何か』を守るために断ったのだとしたら、それは何だと思う?」
(→ 「敬意がない(悪いこと)」という決めつけを一旦保留し、別の動機を探らせる。)
別の何か…? まあ、プライベートの時間じゃないですか? ゲームしたいとか、動画見たいとか。
そうだね。もし彼にとって、プライベートの充実こそが『明日また高いパフォーマンスで働くための必須条件(=プロ意識)』だとしたらどうだろう? 彼は『チームを軽視』しているのではなく、『自分のメンテナンス』を優先しているだけかもしれないよ。(→ 相手の行動論理を、ポジティブな文脈(プロ意識)で再解釈してみせる。)
プロ意識としての休息…ですか。頭では分かりますけど、やっぱりなんか納得いかないですね。飲み会で話す無駄話こそが、仕事の潤滑油になるのに。
課長がその『潤滑油』の価値を信じていることは素晴らしいことだし、それを変える必要はないよ。ただ、『新人にとっては、別の方法(例えば効率的なチャット連携など)が潤滑油になっているかもしれない』と想像することはできるかな?(→ 課長の価値観も肯定しつつ、「相手には相手の正解がある」という事実を提示する。)
別の潤滑油、か…。確かに彼はチャットのレスポンスは誰よりも早いです。飲み会に来ないことばかり見て、彼のそういう貢献を見ていなかったかもしれません。
そこに気づけるのがあなたの度量だね。飲み会を強制するのではなく、『君のチャットの早さはチームの助けになっているよ』と伝えた上で、たまにはランチにでも誘ってみたらどうだい? それなら彼も話しやすいかもしれない。(→ 相手の論理を理解した上で、互いが歩み寄れる新たな行動(ランチ)を提案する。)
この会話において、部長は課長に「同情(シンパシー)」して一緒に部下の悪口を言うのではなく、「共感(エンパシー)」を使ってGさんの視野を広げました。
• シンパシー(同情): 「それはひどいね、部下が悪いよ!」(感情的巻き込まれ)
• エンパシー(共感): 「君はそう感じたんだね。では、部下はどう感じていたんだろう?」(知的理解)
現代社会では、自分と価値観の合う人とだけ繋がることは簡単ですが、この「わかり合えない相手の論理を想像する力(エンパシー)」こそが、分断を防ぐ唯一の方法です。
現代におけるエンパシーは、単に「かわいそう」「同じ気持ちになる」という「情動的共感(シンパシーに近い)」だけではなく、自分とは異なる価値観を持つ相手の靴を履いて想像する「認知的共感(Cognitive Empathy)」の能力が極めて重要と考えます。 そして、相手の立場を理解することで適切な距離感が生まれるはずです。
投稿日: 2026年1月14日 - 更新日: 2026年1月14日