:営業(アンカリング効果を活用)
:顧客(情弱)
専門知識や客観的な根拠が不足している領域での判断を迫られた際、無関係な初期値に強く依存してしまう。
提示されたアンカーが不適切だとわかっていても、それ以降の情報処理や調整(アジャストメント)を途中で放棄してしまう。
自分の意見や見積もりを持つ前に、他者から「あなたはどう思うか」と数値を含む誘導的な質問をされると、それに強く引きずられる。
最初に示された高額な価格や数値が「高い基準」として記憶に残り、その後の妥当な数値を見ても「安く感じる」という基準修正ができない。
自分の知らない分野(例:特定の専門株価、特殊な機器の原価)の判断を求められた際に、最初に言われた数値を盲目的に信じてしまう。
ソフトウェア開発会社が、新しい顧客に対し、システム開発費用の見積もりを提示する場面。営業担当が意図的に高いアンカーを設定し、顧客の交渉基準を操作しようとしています。
今回のご要望いただいたシステムですが、業界標準かつ最高レベルのセキュリティを確保しようとすると、正直、最低でも3,000万円は必要になります。これは、競合他社がこの規模で提示する最も低いラインです。 (→ 3,000万円という高額なアンカーを、あたかも「最も低いライン」であるかのように提示する。)
3,000万円ですか…。正直、予算をかなり超えていますね。私たちの予算は1,800万円で考えていました。
1,800万円ですか。なるほど、それは難しいですね。当社の標準的な開発規模と比較しても、2,000万円以下でこの機能は絶対に実現できません。最高品質を求めているはずです。
そうですよね…。最高品質は必要です。では、もし2,500万円までなら何とか検討できるのですが、どうでしょうか? (→ 最初に提示された3,000万円がアンカーとなり、交渉基準が初期予算の1,800万円から2,500万円へと引き上げられている。)
2,500万円...ありがとうございます。その熱意に応えたい。ただ、2,500万円だと、当初のセキュリティ機能の約20%をカットせざるを得ません。例えば、重要なバックアップ頻度を半分に減らすことになります。
バックアップの頻度を半分に…それはさすがに怖いです。それでは困りますね。」 (→ アンカーの少し下の数字(2,500万円)を提示し、その数値がいかに危険かを強調することで、次の数字を引き上げさせようと誘導する。)
やはりそうですよね。セキュリティは命綱です。では、2,800万円で、バックアップ頻度は標準仕様に戻し、スケジュールを1ヶ月延ばすことで、いかがでしょうか。この金額は特別割引を適用したギリギリの数字です。
2,800万円で、セキュリティが維持できるなら…。当初の予算よりは高いですが、3,000万円よりは安いですし、この品質なら妥当かもしれません。わかりました、2,800万円でお願いします。 (→ 最初のアンカー(3,000万円)と、自分の予算(1,800万円)を比較するのではなく、アンカーと最後の提示額(2,800万円)を比較し、「安くなった」と感じて受け入れている。)
ありがとうございます。ご理解いただけて良かったです。この最高品質のシステムに、2,800万円の価値は十分にあると確信しています。契約を進めさせていただきます。 (→ 営業側は、アンカリング効果により、当初の顧客予算より遥かに高い金額で契約を成立させた。)
アンカリング効果は、不確実な数値の判断において、以下のステップで働きます。
step1:アンカーの設定
最初に無関係または不当に高い(または低い)数値が提示されます(例:3,000万円)。
step2:情報処理の開始
脳は、そのアンカーを出発点として、そこから妥当な数値に向けて調整(アジャストメント)を始めます。
step3:調整の不十分さ
しかし、この調整は途中で止まりやすいため、最終的な判断が常に最初のアンカーに近いところで落ち着いてしまいます。
現代社会では、情報の不確実性が高いため、最初に提示された情報に依存しやすい傾向があります。
彼を知り己を知れば百戦殆うからず(敵と自分の戦力・現状を客観的に把握すれば負けない。)
投稿日: 2025年12月31日 - 更新日: 2025年12月31日